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 No.142         構造計算偽造事件         2005.11.21

同じ建築設計業に携わる者として、とても哀しく・ショックで恥かしい事件です
同業なので、背景は容易に推測出来ます・・・

受注が少ない(食って行けない)下請け構造事務所と、利益生命のデベロッパー
の“相乗効果”が生んだのでしょうが、
両者は、自分達の職業への誇り・使命感を何処へ置き忘れたのでしょう・・・?

“最後の砦”の確認申請審査の民間機構が、その役割を果せなかった事も問題で
しょう
・・・国交省が早々と“民間の事件”と発言したのは大きな誤りです・・・民間機構
はあくまで“官の代行業”に過ぎないからです

(審査が早く無理が利き易い理由から)我々も民間機構を頻繁に利用しますが、
民間機構が何の責任も取らない機構なら、我々も自前物件は従来通り、役所に直
に提出したほうがイイかもしれません・・・

・・・・・・・・・・・・・・

我々へも、施主からローコスト化への要望は強いが
報道で明らかになった様に、
構造計算は、国交省認定のソフトを使いコンピュ−ターで自動計算される為
腕が良いから、柱や梁が細くなったり、鉄筋の使用量が少なくなるのではなく、
(行き過ぎた)構造のローコスト化の本質は、耐震の安全のマージンを減らす行
為に過ぎません

空調設計も同様です
腕が良いから、空調の総馬力数が小さくなるのでは有りません
空調容量を収容人数のピーク時で設計するのか、満席時は少々の(効きの悪さは)
我慢して貰うのかの違いです

もう1つは換気です
空調機のサイズを小さくする取って置きの方法は、換気扇のサイズを小さくする
事です
・・・冷えた空気や暖かい空気を放出しなければ“補給”は少なく済みます(・・・タ
バコ臭への我慢は少々必要ですが・・・)
従って空調設計のローコスト化も、所詮は、効きか・換気のどちらかに目をつむ
る行為に過ぎません

電気設計も同様です
使用する空調機のサイズ・店内の照度等である程度は自動的に決まってしまいま
す・・・腕の余地の少ない分野です

見積り時に、予算オーバーすると、ゼネコン側から“VE(バリュー・エンジニ
アリング)“と称するコストダウン提案が出される事も多いが、これも所詮は“品
質ダウン”に過ぎません

ココまで書いて来ると、身も蓋も無い話しで申し訳ありませんが・・・
実は・・・身も蓋も無い話しです!!

施主側は、“品質を下げずにコストを下げて欲しい”と言いますが、
理由も無くコストダウンは無理です

何処までの品質ダウン・規模の縮小が可能かの議論をオープンに話し合うことが、
“身も蓋もある”ローコストの正攻法です

・・・・・・・・・・・・・・・

身近な事件を教材に、“本心の告白”です・・・

ある面では、そうせざるを得なかった今回の事件の主犯者が可哀想でもあり、
我々も、同様の事件を犯す危険性を持つ立場にいる事を自覚し、仕事への強い誇
り・使命感・責任感を持ち続けようと思った事件でした



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