>前号 | バックナンバー | 次号< |
この事件が最近の最大の関心事です・・・好奇心からではなく、我々の設計業界 の危機だからです “何と言う馬鹿な構造設計士だ”と怒りつつも “起こるべくして起きた事件“と言う気がしています 元々設計事務所の経営は大変ですが、特にバブル崩壊以降の建築不況・公共 事業の減少も影響し、業界全体の経営状況は(日本の誇る日建設計ですら赤字になる ほど)困窮しています 建築業界全体ではゼネコンの“設計施工”が圧倒的シェアで、全建築マーケット の95%と聞きます(・・・直に設計事務所経由の仕事は全建築マーケットの5%!) ・・・設計も工事も建築会社が受注し、設計能力が無い中小の施工会社は設計事 務所に下請けに出す 更にその下に今回の構造事務所がいる ・・・設計施工は原則禁止のはずなのに、施工会社が一級建築事務所登録をすれ ば、設計施工がOKになると言う曖昧さが背景にある つまり監理・検査無き建築工事(図面通り工事がなされている事を確認出来ない 物件)が95%という事です 1級設計士が日本中に27万人いると言うが、大半がゼネコンの下請けで働い ている事になる この仕組みの中では(自前で生活が成り立たない以上)設計事務所の発言力がダ ンダン小さくなるのは当然 (悪い事と)解かっていても、お金を頂くゼネコンから頼まれれば“経済設計” してゆかざるを得ない現状がこの事件を生んだと思います 大げさに言うと、文化を軽視し経済優先で、質より量の拡大を図ってきた戦後の 高度成長社会・建築業界の残した“忘れ物”です 曖昧な設計施工制度や、困窮している設計業界の現状に目をつむり、確認申請業 務の強化・一級設計士制度の更新制度と言った(弱い物イジメ的)各論政策を引 いても根本的解決にはならない 政治が真っ先にするべき事は、建設業界・設計業界を健全にする事です 監理体制を法的に確立する事です その為には、設計施工の悪しき習慣を止め、設計と施工を完全分離し、クライア ントから設計事務所が直に受注する制度を急ぐ事です ゼネコンへの“遠慮”から解放され“中立化”した設計事務所は、“手抜き工事” からクライアントの利益を守るでしょう ゼネコンも設計事務所に下請けに出す以上、業界全体のコストは大きくは 違わないはずです ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ しかし今回の事件で一番驚くのは たった一人で“国を揺るがすほどの、パニックを起せる”と言う日本国の脆弱さ です 元請設計事務所のチェック・検査機構・現場監理等いくつものハードルを簡単に越 え“倒壊予定ビル”が37棟も建ち この事務所は5年間で、190棟以上の構造計算をし、まだ被害が増える可能性 がある・・・ 既に、建設会社が1社倒産し180名もの社員が失業し、元請設計事務所からは 自殺者まで出て、 近々に“トリアエズ”37の訴訟が始まる・・・元請設計事務所・検査機構・施 工会社・地方自治体が絡んだ大掛かりな裁判になり、責任のなすり合いで長期化 すると思う 被害者は何の手も打てずローンを抱えたままの不幸な家庭が増える・・・ 検査機構が国の管轄下である事を理由に、国は超法規的に救済措置を取る必要が あると思う 建築行政・マンション業界・設計業界を揺るがす“歴史的大犯罪”がたった一人 で起きた・起せた! ・・・嗚呼ニッポン!! |
|
>前号 | このページトップへ | 次号< |